2024年のノーベル化学賞は、その半分がタンパク質の構造予測に関する業績によりデミス・ハサビス氏とジョン・ジャンパー氏(Google DeepMind)に、残る半分がタンパク質の計算による設計によりデヴィッド・ベイカー氏(ワシントン大学)に授与された。
出典:nobelprize.org
かんたんに言うと
タンパク質はアミノ酸が長くつながった鎖であり、それが折りたたまれて複雑な三次元の形になる。細胞の中でどう働くかを決めているのは、この折りたたまれた形である。アミノ酸配列だけからその形を言い当てることは、約50年にわたって未解決の問題であり続けた。2020年に DeepMind のチームが発表した人工知能モデル AlphaFold 2 が、この壁を崩した。関連するデータベースは2億を超えるタンパク質の構造を収録できるようになり、これは地球上で科学が記載してきたタンパク質の圧倒的多数にあたる。2024年のノーベル化学賞は、一方でこの予測を、他方でその逆の操作 — 計算によって新しいタンパク質を設計すること — を担ったデヴィッド・ベイカー氏を顕彰するものである。
受賞の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受賞 | 2024年ノーベル化学賞 |
| 前半分 | デミス・ハサビス氏、ジョン・ジャンパー氏(Google DeepMind) |
| 対象業績 | タンパク質の構造予測 |
| 後半分 | デヴィッド・ベイカー氏(ワシントン大学) |
| 対象業績 | タンパク質の計算による設計 |
| 対象モデル | AlphaFold 2(2020年に DeepMind のチームが発表) |
| 解決された問題 | アミノ酸配列からタンパク質の三次元構造を予測すること |
| 未解決だった期間 | 約50年 |
| 関連データベースの収録数 | 2億を超えるタンパク質構造 |
技術的な解説
1. 配列から立体構造へ — タンパク質はアミノ酸配列によって規定されるが、生物学者が知りたいのはその複雑な三次元構造である。計算によって前者から後者へ到達することが、50年にわたって未解決のまま残された基礎的な生物学の問題であり、AlphaFold 2 が解いたのはまさにこの問題である。
2. 記載された生物界の規模に及ぶデータベース — この突破は少数の実証用タンパク質にとどまらなかった。モデルに付随するデータベースは2億を超える構造を収録し、地球上で科学が記載したタンパク質の圧倒的多数を覆っている。
3. 賞のもう半分、逆向きの問題 — 予測が配列から形へ向かうのに対し、デヴィッド・ベイカー氏に与えられた計算によるタンパク質設計は、目指す機能から出発して、これから作るべきタンパク質へとさかのぼる。2024年の賞は、この二つの方向を一つにまとめた。
この突破がひらくもの
| 分野 | モデルが可能にすること |
|---|---|
| 創薬研究 | 研究の大幅な加速 |
| ワクチン | 新しいワクチンの開発 |
| 酵素工学 | プラスチックを分解できる酵素 |
| 細胞生物学・ウイルス学 | 細胞やウイルスの機構の精密な理解 |
因果の連鎖
タンパク質の構造予測という、約50年にわたり未解決のまま残された基礎的な生物学の問題 → DeepMind のチームによる人工知能モデルの開発 → 2020年に発表された AlphaFold 2 が、アミノ酸配列だけから三次元構造を予測 → 関連データベースへの2億を超える構造の収録 → 創薬研究、ワクチン、酵素工学、細胞・ウイルス機構の研究の加速 → 2024年ノーベル化学賞、デヴィッド・ベイカー氏の計算によるタンパク質設計との同時受賞。
出典
2026年8月のファクトチェック監査で確認した参照先。本ブルティンの記述は
以下のページと照合されている。
